緑黄日記

水野らばの日記

カフェバイトの思い出

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大学生時代カフェでバイトをしたことがある。デザートや飲み物を運んだり、お会計をしたり、皿を洗ったりする。どれも楽しいものだった。中でも僕が一番好きだったのはカプチーノを作ることだ。

 

黒と銀色のエスプレッソマシーンの前に背筋を伸ばして立つ。四角いボタンを押すと中央ノズルの先から極彩色のエスプレッソが滴り、コーヒーカップの縁を沿って底に溜まっていく。その間、冷蔵庫から取り出した牛乳を子供用のコップほどのサイズの銀色の容器に注ぐ。先ほどのノズルとは別に右の方にもノズルがあり、コックを捻ると熱い水蒸気が出る。ノズルの先を牛乳に浸し、コックを捻る。牛乳はごおごおと音を立て泡立ち温まっていく。ふわふわあつあつとなった牛乳をエスプレッソの入ったコーヒーカップにゆっくりと、それでも勢いを持って注ぐ。この加減が大切なのだ。ゆっくりすぎると、液面が白一色になり、勢いをつけすぎると茶色一色になる。茶色の背景に綺麗な白い丸が浮いている。コーヒーの海に浮かぶ雲のようだ。上手く出来た。今日は気分がいいので、ラテペンを使って白い丸をハート型にする。完成だ。

 

これを飲む。僕が。僕が飲む。お客さんに提供とかはしない。僕が飲む。オーダーも入ってないし。まず客がいないし。カップに口をつけたまま目線を厨房に移すと髪を赤に染めた店長と目が合う。

 

「おはようございます」

「おはよう」

「見てください。カプチーノ 綺麗にできたんですよ」

「飲みかけじゃん。わからないじゃん」

 

このカフェは緩い。店長もバイトの人も来る客も仕事も緩い。「ゆるゆるのゆるじゃん」と言いそうになるし、何ならたまに口に出している。なぜ緩いかといえば、ここのオーナーが併設する結婚式場の社長、その金持ちのドラ息子なのである。彼は採算を取ろうと努力をしない。店長の髪色も赤色になる。諸君らもウェディング関連会社の金持ちドラ息子が道楽でやっているカフェを探したほうがいい。

 

ある日はコーヒー飲んでアイス食べて、おしぼりでウサギを作っていたら勤務時間が終わる。そしてある日はコーヒー飲んでアイス食べて、観光客っぽい白人男性に「May I take your order?」と聞いて「この『本日のデザート』って何ですか?」とめちゃくちゃ日本語で返されたりしていたら終わる。また、ある日はコーヒー飲んでアイス食べているだけで終わる。

 

いいよねカフェバイト