緑黄日記

水野らばの日記

Saucy Dogの『いつか』を聞いて欲しい

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Saucy Dogと言うバンドがある。Saucy Dogは大阪発の3ピースバンドである。彼らの曲『いつか』に魅せられてもう2年が経つ。

 


Saucy Dog / いつか(Official Music Video)

この曲は別れた彼女との思い出を振り返り、いつかまた会える日を想う男性を描いた切ないラブソングである。この曲の舞台はボーカルの石原さんが学生時代を送った島根県松江市で、ここは僕の故郷でもある。曲中にある『仰向けになってみた湖』も『田和山の無人公園』も僕の学生時代を象徴するものであった。この曲を聴くと高校の時の付き合っていた女の子との別れを思い出す。

 

「失礼しました」

理科準備室の扉をそっと閉める。廊下では彼女が不貞腐れた顔で壁に寄りかかっていた。

「遅い」

ちょっとだけ不機嫌そうに彼女が言う。

「ごめんごめん、話長引いちゃって」

高校3年生の3月、卒業式も終わり、学校内はひっそりとしている。僕らは受験結果を先生に報告するため学校に来ていた。僕は関西の大学を受験し、合格した。一方、彼女はセンター試験の結果からもう1年間勉強することを決めていた。彼女の決断はこのロマンスの終わりを予感するのには十分なものだった。

僕らは学校を後にし、裏手にある公園に来た。僕らの学校帰りのお決まりのデートコースである。ここで僕らは2人でひとつの傘を差したり、ブランコに乗り星を眺めたり、多くの時間を過ごした。

人気はない。まるで世界が終わって僕らだけが取り残されたかのようである。公園内に多く植えてある桜たちはまだ眠ったままだ。色を失った世界の中で彼女の黄色のマフラーだけが温かさを保っていた。僕らはいつの間にか手を繋いでいた。

繋いだ手の暖かさとは裏腹に足元あたりに冷たい風を感じる。空は晴れなのか曇りなのかどっち付かずの様相であり、それは僕の心を写しているかのようだった。

「あのさ、別れよっか」

僕は胸中にしまっていた言葉を掬って口にした。彼女は黙ったままでいる。繋いだ右手は少し震えていた。

彼女には彼女の人生がある。僕は彼女に自分の人生をちゃんと生きて欲しかったのだ。僕と付き合っていれば、彼女の1年間勉強するという決意に水を差すのは明白である。こういった理由から僕は彼女と別れることを決めていたのだ。

「わかった」

彼女は顔を俯き一言そう呟いた。

 

彼女が今どこで何をしているか知らない。幸せになっていて欲しいなんて、幸せにしてあげられなかった男にとっては手に余る願いである。ただ生きていてくれたらいいなと思う。そしてまたいつか出会えたら、自分勝手に小さなラブストーリーを思い出す。

 

今となってはいい思い出である。この出来事が全部妄想ということを除けば。