緑黄日記

水野らばの日記

散歩は楽しい

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『命短し歩けよ乙女』

森見登美彦さん作のキュートでポップな恋愛ファンタジー小説である。映画化もされたため知っている方は多いだろう。僕はこの作品が大好きなのである。タイトルの『命短し歩けよ乙女』から秀逸である。なんと心地の良いオマージュであろうか。「命短し歩けよ乙女」「命短し歩けよ乙女」舌触りが非常に良い。何度も口に出してしまう。黒髪の乙女になって僕も歩かなければ、そんな思いに駆られる。

 

僕は散歩が好きで、暇さえあれば近所をぶらぶらしている。道と言うのは日によって表情を変える。道端の植物も日に日に育ち、休日には住宅のベランダに布団が干され、初めて見る顔の人とすれ違い、建設途中のアパートも段々と出来上がる。どれをとっても同じものはない。これらを拾っていくことで自分が『世界』という物語の中にいることを再認識できる。

また、自分の解像度を変えることでもその道は全く違ったものに変貌する。解像度を高くすると、今まで見ていなかった家と家の間にあるカエルの置物と目があったり、理髪店の時計のこっちゃこっちゃという奇妙な秒針の刻み方に気がついたりする。

散歩は楽しい。

 

散歩の楽しみ方は数あれど、最近、マイブームの波が気てそれを華麗に乗りこなしているものがある。落とし物だ。落とし物とは誰かが気づかずに落としてなくした物である。僕はこれらを血眼で探して、見つけるたびに写真に収めている。傍から見たら完全に110の人であるが、今僕は麗らかな黒髪の乙女なのでご容赦いただきたい。今回はコレクションの中から少しだけ紹介しよう。

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4枚の落とし物の写真を見ていただいたが、ここには共通点がある。落とし物が端や何かの上に避難させられている点だ。僕はこれが大好きなのだ。「警察まで届けるのは億劫だ、けれど道端に落ちているものをそのままにしておくのも心地が悪い」と言った心理が透けて見えるのが良い。僕はこれを『なけなしの善意』と呼んでいる。皆さんも探してみてくれ。

 

先日、暇だしお散歩でもするかと、黄色のスニーカーを履き、サコッシュにスマホと財布とイヤホンだけ入れて出かけた。今日のお散歩も楽しいなと阿保面で歩いているとなんだか喉が渇いてきた。ちょうど喫茶店を見つけたため中に入った。古民家を改装した風な所謂『古民家風カフェ』である。木目調の壁や梁、柔らかな色の机やいす。非常に居心地が良い。入店し、店員さんに促されるまま席につくと、別の店員さんが荷物を入れるためのカゴを持ってきてくれた。しかし僕はサコッシュだけを肩からぶら下げた軽装である。カゴが必要なほどではない。店員さんにカゴが必要ない旨をつたえようと「カゴいらないです。お散歩中なので」と言った。最悪である。なぜ「お散歩中なので」をつけたしたのか。最悪である。恥ずかしさで記憶はそこで途絶えている。

 

たまにこのことを思いだして恥ずかしくなり、枕に顔うずめて「ああああああああああああああああ」と叫んでいる