先日、飲みの席で上司にこんなことを言われた。
「水野くんはずっと日常会話を間違えている。日常会話は『オモシロ』や『価値観』をぶつけ合う競技じゃない」
僕の感想を言わせてもらうと『違うのかよ!』である。会話は面白いエピソードや価値観をぶつけあって、相手を笑わせたり、相手をビビらせたりする競技だと思っていた僕は驚倒した。僕は普段の日常会話で『蚊に噛まれた痒みは50度以上の熱で分解すると聞いたのでお湯をかけたら滅茶苦茶に火傷した』『可愛い女の子って鏡見るたびに「助かる~~」って言ってんのかな』みたいな話をしている。どうやらこれは日常会話とは違うものらしい。
そういえば、日常会話はよくキャッチボールに例えられる。相手のボール(発話)を受け止め、それを相手の胸元めがけて、相手が受け取りやすいように投げる。僕がしているのは、さしずめドッジボールである。ボールを人間にぶつけるでお馴染みのドッジボールである。人の世と言うのは、ボールをパスし合いながら成り立っている。僕一人だけボールをぶつける遊びをしている。まぁぶつける目的でなげられたボールをキャッチし、それを投げ返すことが出来れば別に僕としては問題ないのだが、会社にお賃金を貰って生きている身としては会社には迷惑をかけたくないので一緒にキャッチボールに参加するのが道理ではないかとも思う。
最近は日常会話を学ぼうと、会社やカフェや、行きつけのマックで周囲の人間の会話に聞き耳をたてている。キャッチボールの技術を身に着けるために、人々がしているキャッチボールを見ることから始めることにしたのだ。すべては観察から始まると言ったのは誰だったであろうか。また、盗み聞きをすることについては、インターネットで調べてみると、どうやら盗みは盗みでも盗み聞きは犯罪にならないらしい。法律を絶対的な正義だと思っているわけではないが、社会に生きる上でのひとつのボーダーにはなり得るのと考えているため良しとすることにした。今、モラルの話はしないでいただきたい。
会社からの帰り、夕食を食べるため行きつけのマックに行った。余談であるが僕はマックが好きである。ちょうどいい賑やかさと、ちょうどいい価格のちょうどいいメニューが魅力的であるからだ。何よりマックに行くと『今日は何かしたぞ!』という気分になれる。朝から何もしてない休日の夜に『何かしたぞ!』という気分を味わうためだけにマックに行ったりする。
さて、閑話休題である。マックで隣に座った女子高生2人がシェイクを飲み、ポテトを分け合いながらこんな会話をしていた。
「最近、雨ばっかりだね」
「そうだね、梅雨だもんね」
「梅雨か、梅雨ってなんで梅って字が入ってんだろうね」
「なんでだろうね」
「そういえば、今日さ、授業中に○○君が遅刻して入ってきてさ、面白かった」
「○○君去年同じクラスだったわ、あの人授業中前の扉からどうどうと入ってくるよね」
「すごいよね」
これが日常会話だとしたら僕はずっと間違っている。