緑黄日記

水野らばの日記

会社の敷地内の植え込みに苗を植えた

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木々の新緑が太陽に照らされ、きらきらと輝く6月初旬、苗を拾った。

僕がいつものように阿保面で住宅街を歩いていると、ポットに入った苗を見つけた。黒いポットに入ったフウセンカヅラとアサガオの苗が『さしあげます!!どうぞご自由に』という張り紙と共に置いてあったのだ。さしあげられたものは拒まないのが礼儀である。というわけでアサガオとフウセンカズラを1つずつ持って帰った。フウセンカヅラって成長するとどうなるんだろう、なんて呑気なことを考えながらこれまた阿保面で帰宅し、机の上に苗を並べてみた。ここでひとつ気が付いたことがある。

 

どこで育てようか

 

僕の根城はワンルームのアパートで、庭もなければベランダもない。窓をあけると目の前にはコンクリートの壁がそびえ立ち、昼の11時から12時くらいの間だけ隣の建物の2階の窓から反射した光が届くのみである。脳裏に『日照権』と言うワードが浮かぶ。21世紀にこんな物件暗あるのかと思うほどである。ほとんど洞窟だ。こんなところでこの苗たちが育つはずもない。どうしたものだろうか。

 

というわけで、会社の敷地内の植え込みに植えた。勝手に。僕と言う歯車は会社の所有物である。当然、歯車の所有物も会社の所有物である。会社のものは会社のもの、僕のものは会社のものだ。僕が拾った苗は会社に植えるのが道理であろう。不完全な理論武装のもと、会社の敷地内にある植え込みに勝手に苗を植えた。勝手に。

 

苗を植えてから数日間は気が気ではなかった。泥棒に盗まれやしないか、蛇に食べられやしないか、野良怪獣の溶解液で融かされやしないか、不安で不安でたまらなかった。不安を解消するため、仕事中に3時間くらいの間隔で様子を見にいっていた。苗の様子が3時間前と変わるはずがないのだが、毎回、苗たちがそこにあり、ひとりで立っていることに安堵した。今考えると過保護もいいところである。恐らく、僕は娘の結婚式で号泣する。3日置きに娘の新居に訪れる最悪の父親になる。

 

梅雨入りが遅れ、かたつむりや紫陽花が雨を待つ6月中旬、苗を植えてから数週間が経った。苗は大地にしっかりと根を張り、心なしか大きくなっている。僕と言えば、過保護はとうの昔に卒業し、様子を見に行くのも1日1回になっていた。しかし、数時間おきが1日おきになったところで、大の大人が職場をこそこそと抜け出し、会社の敷地内の植え込みでこれまたこそこそと何かやっている様は異様である。今、もしも会社内で事件が起こり、警察に防犯カメラの映像を調べられたら、真っ先に僕に容疑がかかるだろう。そして容疑者として取調室に連れてこられた僕は、泣きながら「違うんです。僕じゃないんです。僕はただガーデニングを楽しんでいただけなんです」と弁明するのだろう。最悪である。

 

梅雨の長雨が続き、雲の晴れ間の青空も懐かしい7月初旬、いつもの植え込みに苗の様子を見に行くと、苗はほかの雑草とともに引き抜かれ、そこには無が広がっていた。

 

なあぁぁぁっぁぁ!!!!