緑黄日記

水野らばの日記

持ち掛けられた相談を解決したい

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相談されたい。相談を持ち掛けられたい。相談、それはこの人ならば己の内にある悩みを解決してくれるに違いないと信頼した人物に悩みをぶつけることである。相談されること、それは人望の証でもある。そんな人間に私もなりたい。雨ニモマケズ、風ニモマケズである。僕は相談を持ち掛けられることが全くない。24年幾ばくの人生を振り返ってみても、そこには焼野原が広がるばかりである。今まで誰かに何か相談をされたことが全くないのだ。言い換えると人望が全くないとも言える。助けてくれ。

 

人間は多くの悩みを抱えている。『悩みの海』ことヤフー知恵袋を少し覗いてみればわかるだろう。恋心を意中の彼に打ち明けるのか、このまま夢を追ってドラムを叩いていいのか、セットの味噌汁を50円足して豚汁にするかどうか。悩むこと、それは人間が人間足りうる一つの理由でもある。そこには自分ではその答えを見出すことが出来ないことも多々ある。この悩みを解決する方法として、相談がある。

 

相談をされたい。そして、それに対し格好良く応えたいのだ。曇天に差し込む一筋の光のように、相談者の指標となるような名言、もとい名受け答えをしたい。

 

というわけで、理想の『相談事にかっこよく応える自分』を書き殴ってみた。久しぶりに更新する記事であってもやることは変わらない。脳内の妄想を少しだけスプーンですくってインターネットの海にぶちまけるだけだ。

 

 

「ねぇねぇ先輩どう思います?」

ソファにもたれ、手に持った雑誌に目を向けたまま彼女は言った。スカートにしわが付くのを気に留める様子はない。僕は彼女を一瞥するとまた教科書に目線を戻す。

「知らん。知らんついでに言うと、何でいるのだ」

「別にいいじゃないですか。で、どう思います?」

彼女はぶつくさと言った。

彼女は生徒会の後輩であり、最近よくこの生徒会室に来るようになった。髪は栗色で肩までのウルフカット。くりくりした垂れ目とぽてっとした輪郭がどことなく狸を思い起こさせる。

現在、生徒会としての業務は一切ないため、他の生徒会役員は来ず、この生徒会室はほとんど僕専用の部屋となっている。お昼休みや放課後に来てくつろいだり、辞書や充電器や本を置く物置として利用したりしている。最近は拾ってきた電気ヒーターを置いたり、家から掛け布団を持ってきたりして、この部屋で快適な冬を過ごそうと目論んでいる。少し前まで、生徒会長として文化祭の運営に粉骨砕身していた身である。これくらいの職権乱用は許されてもよいはずだ。

しかし、この安寧秩序も彼女が出入りするようになってから乱れに乱れ、ひとり静かに過ごせる貴重な環境を蹂躙されている。白人が入植してきたアボリジニの気分だ。僕としてはたまったものではないが、彼女も生徒会役員のひとりであるため追い返すことは出来ない。

「もう、無視しないで下さいよ。本当に悩んでるんです」

僕は教科書を閉じて彼女の方を向いた。彼女が入ってきてから勉強に手が付かない。もう諦めたのだ。

「申し訳ないが、全く聞いていなかった。初めから言ってくれ」

「ええぇ信じられない。じゃあもう一回言いますね。だから進路に迷ってるんです。みんなどうやって志望校決めてるんですかね。やりたいこととか無いんですよね」

彼女のくりくりとした瞳が僕をまっすぐに捉えている。僕は少し考えてから切り出した。

「そうか、進路か。そうだな、君は『カップ焼きそば』って知っているか?」

「『カップ焼きそば』ですか?あの食べるやつですよね」

「そう、その『カップ焼きそば』。あれ、どこにも焼く要素がないと思うのだよ」

彼女は口をぽかんと開けてただただこちらを見ている。話の続きという餌を待っているコイのようである。二人の間に静寂が流れ、さっきまで気にも留めていなかったグラウンドで練習しているサッカー部の声が耳につく。

「つまり、つまりどういうことですか?」

「つまり僕に聞くなということだ」

「もーーーー」彼女は立ち上がって地団太踏むそぶりを見せた。

 

最終的に彼女は僕を追いかけて僕と同じ大学に進学し、2人は正式にお付き合いをして幸せに暮らせればいいのに。

 

何の話だっけ