緑黄日記

水野らばの日記

間を繋ぐ術

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先日、取引先との打ち合わせがあり、それに同席した。弊社の人間は僕と先輩、そして上司の3人だ。対して先方は、何やらカタカナの肩書を背負ったおじさんと、漢字の肩書を背負ったおじさんと、先の春に社会人としての歩を進めだしたばかりという青年である。青年はまだ見習いであり、勉強として打ち合わせに来たらしい。僕は彼を歓迎した。社会人は会社の内外を問わず、社会全体で育てていくものであるからだ。見習いの社会人を温かく迎えることは先輩社会人の責務でもある。ちなみに僕も彼同様に先の春に入社した見習いである。温かく迎えて欲しい。

 

僕は弊社に訪れた先方の3人を会議室に案内し、お茶を淹れて配り、書類等々の準備をした後、「さて、ここからどうしようかな」と考えた。

 

というのも、先輩、上司が他の仕事で会議の時間に間に合わないことが当日発覚し、僕に『1時間くらい間を繋げ』というミッションが課されていたためである。僕は先方に事情を説明し謝罪した後、『会社の敷地に勝手にアサガオの苗を植え育てている』『シュレッダーが楽しいので書類を多めに刷っている』という新入社員漫談を披露した。途中で「これは1時間持たないぞ」と悟り、もう脱ぐしかないと覚悟したが、幸いなことに30分くらいで上司と先輩が到着し、純潔を守ることが出来た。

 

ここで気が付いたのだが、僕は間を繋ぐ術を持ち合わせていない。これはまずいのではないかと思った。何かしら間を繋ぐ術を考えなくてはならない。例えば、突然「はい、明日、あなたには1時間ほど間を繋いでいただきます。場所は室内のホール、お客さんは50名程度を予想しております。何とかしてください」と言われたときに何をするかということである。

 

会話が上手な人は喋ればよい。歌が上手い人はその美声を披露すればよい。ダンスが上手な人は音楽に合わせてその身を揺らせばよい。ユーモアを製造できる人はフリップ芸なりコントなりをすればよい。僕はこのどれにも当てはまらない。自分に何ができるかを社会人にとって貴重な休日を丸一日使って考えてみた。交友関係がほぼ皆無なため、これ位しかすることがないのだ。

 

1つ目の案は『猫の手を借りる』である。まず、猫を業者から借りてくる。インターネットで調べるとそういったレンタルサービスがあるらしい。日本も先進国を名乗るだけのことはある。猫を抱えて席を回る。そして客に猫を触らせてやる。以上である。これで1時間ほど間を繋げるであろう。何故なら猫は可愛いからだ。人間は猫を見ると時間を忘れて愛でてしまう設計になっている。これを利用しない手はない。万が一にもそんな人間はいないと思うが、猫が嫌いという者は、後ろの方で日ごろの反省でもしていればよい。紙とペンは支給しよう。

 

2つ目の案は『ハムスターに迷路を解かせる』である。まず、友人からハムスターを借りてくる。2案続けて動物を借りてくるところから始まるが、そこはご容赦いただきたい。ハムスターを予め用意したハムスターサイズの迷路に放ち、彼がゴールに向かって突き進んでいく様を観察する。これも、1時間を繋ぐには十分である。人間は皆、「ああ、来世はハムスターになりたいな」と思っているからだ。来たる来世を実感として持っておくことは良いことであろう。これに興味ないという人間は後ろの方で自由帳に迷路でも書いておけばよい。完成物に一瞥くらいはくれてやろう。

 

3つ目の案は『彼女が出来たらやりたいことリストの公開』である。僕は、もしも僕に彼女が出来た場合にやってみたいことをまとめ上げ、リストにしている。新しく思いついたものがあればこのリストに加えている。この編纂に編纂を重ねたリストを公開してはどうかということである。これはかなりの痛みが伴うが、恋とは人類最大級のコンテンツであり、共感性が高いため、間を繋ぐ術になりうるのではないかと考える。彼女が出来たら短編小説を送りたい。助けてくれ

 

4つ目の案は、これが最後になるが、『理科の授業』である。これが一番現実的ではないかと考える。少なくとも上記の3つよりはであるが。僕は大学において、科学の一端を学んでいた。そして、学部の同期が4年で卒業するのをよそに、僕は1年長く、5年間大学に在籍したのち卒業した。これも偏に僕が勉学に熱心であったからである。また、僕は大学で理科の教員免許を取得した。理科の先生になれるということだ。

昨今、世を見渡してみると、マイナスイオンや水素水など所謂「疑似科学」なるものが我が物顔で跋扈している。これは我が国の理科教育が不十分であることを示しているのではないかと考える。ここを解決するのが理科の教員免許を取得した人間の使命のひとつではないか。ということで理科の授業をしたい。聞く気がない生徒は廊下に立っていてくれ。

 

もうあとは何かを燃やすしかない。何かが燃えているのが一番面白いので。