緑黄日記

水野らばの日記

フレンズの『夜にダンス』が寄り添う夜

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新入社員である。

この春に新入社員として働きはじめ、今は研修、研修の毎日である。己を研き修めるために会社のフロア内を右往左往している。

 

先日、新入社員歓迎会が開かれた。僕は新入社員なので主賓という立ち位置である。しかし、僕も社会で、もとい、この会社で生きていく必要がある。良識のある大人として、『我こそ主賓である!おい、そこの、酒を注ぎ給へ!』という尊大な気持ちを隠し、「お酌をしたほうがいいかしら」「下座ってどっちだっけ」など気を揉んでいる風を装った。東にグラスを空けた上司あればお酌をし、西に講釈垂れたそうな上司あれば相槌を打って「頑張ります」と答えた。ここでも右往左往している。社会人とは右往左往する生き物なのかもしれない。

 

ふと、少し遠くのおっさんたちに交じってビールをがぶがぶと飲む女性が目についた。歳は僕と変わらないくらいで、髪は短くふんわりとしたマッシュ。小顔で、笑うと顔がくしゃっとなるのが印象的である。初めて見た顔なので恐らく違う部署の先輩であろう。彼女の「がはは」という豪快な笑い声がこちらまで聞こえた。

僕は一目見て、彼女に惹かれた。彼女と会話をしてみたい、彼女を「がはは」と笑わせてみたいと思った。しかし、彼女のもとに行こうとするも、説教と自慢話の入り混じった面白くない話をする面白くない上司に捕まってしまった。結局叶うことはなく歓迎会は終わった。

会場を出ると弊社の御一行がたむろし、めいめいに会話の続きを楽しんでいた。どうやらこの後2次会へと洒落込むらしい。この集団の中に彼女を見つけた。彼女は上司と一言二言交わし、酔っ払いたちで賑やかな飲み屋街を背にして、夜の中をずんずんと進み、ついには消えてしまった。

 

2次会が経て、僕は帰路についていた。ひとり駅まで向かう途中、僕はビールを鯨のように飲んでいた彼女のことを考えていた。笑うときにくしゃっとなる顔、豪快な笑い声。彼女のことで頭がいっぱいである。ここで僕はある曲について思い出した。フレンズの『夜にダンス』だ。僕はスマホにイヤホンをつなぎこの曲を再生する。

 


フレンズ「夜にダンス」

 

フレンズは都会的な生活、友情や恋愛を、これまた都会的なサウンドで紡ぐ男女混合5人組のシティポップバンドだ。月並みな言葉で言えば「お洒落」である。渋谷駅の隣の神泉駅からとった『神泉系』を自称している。

 

トレンチコートを着た女性が光と闇が交差する夜の街をうつむきながら歩いている。期待して出かけたパーティーで意中の相手がいたにもかかわらず、進展なく終わってしまった彼女。王道でありがちなロマンス映画のような淡い妄想にふける。そんな彼女にそっと寄り添うフレンズの音楽。いつしか彼女の足取りは軽やかになり、夜の街をバックに踊りだす。

 

この曲の彼女と僕が重なる。イヤホンから流れるポップサウンドと、キャッチーな歌詞が僕に寄り添う。

 

ということは別になかったのですが、それとは関係なくフレンズの『夜にダンス』は名曲なので聴いてください。新入社員歓迎会で右往左往したところまでは本当です。あと、飲みすぎで帰りに家で吐いたのも本当です。