緑黄日記

水野らばの日記

女の子とパーティーを抜けだしたい

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この春から立派な会社員となった。名刺交換したり、会議に出席したり、上司のグラスにビールを注いだり、社長のゴルフスイングをおだてたりすることでお馴染みの会社員である。会社員の概念が貧困なのは入社して1週間しかたっていないので仕方のないことではある。

 

会社員、それはもう大人の仲間入りといっていい。大人になったら必ず遭遇するイベントがある。皆さんの脳裏にも同様のものが浮かんでいることだろう。そう、欧米かぶれの謎のパーティーである。このパーティーを女性と二人で抜け出したい。謎のパーティーを女性と二人で抜け出すこと、それは人類の夢、はたまた君が見た光、僕が見た希望、ふれあいの心、幸せの青い雲である。

 

会社の先輩にパーティーに誘われた。どんなパーティーかと聞くと「行けばわかるって」とはぐらかされた。

土曜の夕方、駅で先輩と待ち合わせ、タクシーに乗り込む。タクシーは都会の喧騒を通り過ぎ、郊外の住宅地で止まった。一つ一つの家が大きい。見るからに高級住宅街だ。そのうちのひとつの門を先輩の後に続いてくぐる。洋風で大きな一軒家だ。窓からは光が漏れだし、楽しげな音楽がかすかに聞こえる。

玄関を開けると男女の声とイージーリスニングが耳に飛び込んできた。受付と思しき男性に名前を伝え、部屋に入る。そこはテニスコートくらいあろうかという広いリビングだった。20人ほどの着飾った男女がお皿やグラスを片手に会話を楽しんでいる。天井は広く、真っ白な壁に映える黒で統一されたソファーや机が置かれている。大きな窓からはプールが見える。プールサイドにも男女が数十人おり、めいめいに楽しんでいるようだ。

 

僕は退屈していた。先輩はどこかへ消え、戻ってこない。大方、女性を口説いているのだろう。僕は暇を持て余した口にシャンパンの入ったグラスをあてがい、会場内を見渡した。すると、プールサイドのソファーにひとりで座る女性とガラス越しに目があった。視線を交わした瞬間、彼女は微笑んだ。僕は彼女の方へ足を向けた。彼女はロイヤルブルーのドレスを着ていた。華やかな青だが、Aラインで長めの丈が落ち着いた印象を与える。髪は肩までのウルフカットで色は明るい。くりくりした垂れ目で、ぽてっとした輪郭がどことなくたぬきを思い起こさせる。

「退屈してたの。一緒に来た友達はどこかへ行っちゃたし」彼女は言った。

僕たちは他愛のない話をした。このパーティーのこと、仕事のこと、趣味のこと、人間は狸が好きすぎると狸に似てくること。彼女は僕が言う冗談にからからと笑った。

2人の間にちょっとした沈黙が流れた後、彼女はいたずらを計画する少女のように笑みを浮かべて言った。

「ねぇ、2人で抜け出さない?」

 

みたいな展開があればいいのに。

着飾った大人の男女がする謎のパーティー興味あります。呼んでください。